言葉を多く知っていることを「語彙力(ごいりょく)がある」といいます。
語彙力があると、頭が良く見えます。
言葉をたくさん知っているので、人と話すときにも、相手の言っていることを理解しやすく、自分の言いたいことを的確に伝えやすくなります。
逆に、語彙力がないと問題を抱える可能性すらあるといわれています。
たとえば自分にとって不都合なことが起こったとき、
実際に出てきた感情は『怒り』の他にもっと多くの、もっと複雑なものを含んでいるのに、
「ムカつく」という言葉しか知らない人は、
他人に「ムカつく」と伝えることしかできず、
自分でも「ムカつく」と感じることしかできません。
・足を踏まれたのに相手は謝らずに行ってしまって「ムカついた」
・友だちにゲームを教えてあげたのに下手くそすぎて「ムカついた」
・片思いの子とデートしている人を見て「ムカついた」
・今日はどんな日だった?「すげー、ムカついた」
これらの「ムカつく」を語彙力のある人が表現すると、
・足を踏まれたのに相手は謝らずに行ってしまって「腹立たしかった」「悔しかった」
・友だちにゲームを教えてあげたのに下手くそすぎて「歯がゆかった」「もどかしかった」
・片思いの子とデートしている人を見て「嫉妬した」「うらやましかった」
・今日はどんな日だった?「やるせない1日だった」
本当はいろいろな状況から違う感情を抱いているのに「ムカつく」だけしか知らないと、心はずっと1つの感情にとらわれて、物事を多角的に見ることができなくなります。
人間関係においても、実はゲームが下手な友だちにはそこまで怒りの感情はなく、むしろもっと上手くなってくれたらという期待すらしているのに、足を踏んでいった無礼な人と同じようにしか見られないというのはトラブルのもとです。
「ムカつく」と言われた友だちは、自分がどんな悪いことをしたのだろうと傷ついてしまい、関係が悪化するかもしれません。「もどかしいな」と言われたほうが穏やかでいられそうですね。
反対に、良い感情の言葉をたくさん知っていたらどうでしょうか?
単に「やった」「最高」だけでなく、「満足」「爽快」「感謝」「誇らしい」など、言葉どおりの多くの感動を味わうことができます。
語彙力は、日常会話から習得していくことは向いていません。
同じメンバーと毎日話していても、その人たちの語彙力だけで会話が成り立ってしまうため、新しい知識が入ってくるチャンスが少ないからです。
・「今日どうだった?」「すげー、ムカついた」「へー、ヤバいね」のくり返し…。
やはり“国語の勉強をしっかりすること”が語彙力アップの基本です。
小学生の国語クラスで教えていると、学年によっては「むなしさ」という言葉が感情を表すのだとわからずに、おかしな解答になっていることがあります。
ふだん、聞いたこともない=感じたこともない感情なのだろうと思います。
主人公と同じ境遇になったとしたら感じるであろう気持ちのことだと説明をし、辞書を引いてもらうこともあります。
そうやって、未知の言葉を知っている感情とつなぎ合わせていくことで、人生を豊かに生きていってくれたら嬉しいです。