「先生は学生の頃、勉強していましたか?」とよく生徒さんに聞かれます。
学生の頃もしていましたが、講師になってからも勉強しています。
生徒さんと同じ所を、正直に言うと、学生の頃よりも真剣に(笑)
まず、講師として授業をするには “予習が必須” です。
新人の頃は、その日の授業で、何をどのくらいの時間配分で進めるのかを考え、説明の仕方や板書の内容を考え、必要な資料やプリントを用意するために、毎回多くの時間を割いていました。
内容を理解していても、それをクラスの生徒さんの前で、スムーズにわかりやすく説明できるかどうかは別問題なので、練習(シミュレーション)が必要です。
そして準備をしていても緊張はするもので、就職活動の際に『面接官の前で、英語の不定詞について授業をする』という課題を与えられ、その場では何とかやりきって安心して帰宅したものの、その夜体調を崩して救急病院へ行った経験もあります。←相当ストレスがかかっていたのでしょうね(´∀`;●)
とはいえ、授業は用意をして練習通りに進めることができるのでいいんです。
問題は、その場で出てくる問題・・・つまり、生徒さんからの突然の質問です。
「あのー、これ〇〇高校の入試なんですけど、答えがないんですよ。学校の先生も悩んで、授業中に答えが出なくて、先生解けますか?」(え~、学校の先生ができんもんを、私ができるかいな!しかも、答えが無かったら解いても合ってるかわからんやん)
「先生、『五線紙』って英語で何て言うんですか?」(え~、まず五線紙ってなに?楽譜のことやろーけど、そんなん大学受験までに出てきた記憶がないわ)
これらは過去に本当にあった質問ですが、新人の頃は「えっとー・(;´゚д゚)ゞ・゚・ぁゎゎ・・」と思いつつ、ポーカーフェイスで取り繕うのですが、答えられないまま首にはいやぁな冷や汗をかいたことが多々ありました。
以前の私は「先生なら何でも知っていて、すぐに答えられないと恥ずかしい」と思っていたのです。しかし、それこそ不可能な話・・・と長年の講師経験から学びました。
確かに、勉強を続けるほどに、知識が増えるほどに、すぐに解ける問題も増えてはいきます。あの新人時代にはこんなこともわかってなかったな~と今では自分の熟練の技を自画自賛することもあります(。-_-。)ポッ 。そうやって自信をつけていくと、「頭に入れておいて当然の知識」と「お~よくひねってある問題だな、どれどれ、どうやって解くのか見てみよう。解き方を理解できればひとまずOK(数学の問題でよくあります)」の区別がつくようになるのです。もっと言えば、それと同じような問題がどのくらいの頻度で出てきて、平均的な生徒さんならどのくらいが解けて、目の前の生徒さんのレベルではどのくらい必要であるのかがわかってくるのです。
基本的なことが理解できていない生徒さんに、普通でも難しい問題を理解するまで延々と説明するのは酷ですし、逆に「こんなん難しすぎるわ~」と諦め気味の生徒さんが難問読解を必要とする進学校を目指しているなら「でも、これくらい高校でバンバン出てくるから、少しでも慣れておいた方がいいよ」とアドバイスできるわけです。
中には、わざと?難問をふっかけてくる生徒さんもいますね。
「これって解けますか?」と言われて「こうでしょ」と解説すると、「あ、できるんだ」って・・・確かめたいんでしょうね、自分の先生の実力を。気持ちはわかるけど、これが新人時代は恐ろしくて、恐ろしくて。。。今では、それで実力を認めてもらうことで、こちらの言動に説得力が出るので、まぁ、いいかと思って解いてますが(∀・;)
でも、やっぱり、そんな難問解いて株を上げて喜んだり、自分の知識不足に落ち込んでいるよりも、大事なことがあるんだと気が付きました。
解答・解説を見ても、意味がわからないことってありませんか?
たとえ講師もすぐにひらめかなかった問題だったとしても、これまでに習った内容を駆使しているわけですから、解説を見ながらでも、その意味を生徒さんに説明してあげられることが大事だと思うのです。
そして、それが解答・解説がない問題であったら、その解き方を調べまくって、生徒さんに結果を説明してあげることが大事だと思うのです。(←調べることの大切さは『自分で勉強できる人の特徴』の記事に書きました)だから、休日も寝ても覚めてもずっと同じ問題について考えている事もあります。特に入試の過去問を解く時期には。
だから、今では冷や汗をかく前に「今度までに調べておくよ」と伝えることができます。生徒さんが学校の授業で出てきたけど・・・と持って来てくれて、思いつかなかった問題は「どうやってたか、覚えているところを教えてくれる?」と生徒さんに逆に質問することもあるし、その子と同じクラスの生徒さんがいれば、「この問題覚えてる?解き方教えてもらえる?」と声かけもします。そうしてもらったヒントから解き方を導き出したり。その問題が『解き方を理解できればOK』系の問題であればそう伝えるし、『頭に入れておいて当然の知識』系なら講師も反省して覚えます(←最近こちらの方は少なくなってきましたが)。
先生も生徒も、勉強に対する姿勢は同じでいいはずです。先生が知識を出し惜しみするのも変だし、生徒が自分に必要のない(自分は覚えるつもりのない)難問で先生を試す必要もない。先生は持っている知識をフル活用して教え、生徒は未知の内容を学ぶ。そこに敬意を払えないほどに、その先生の知識不足が目に余るなら、卒業して次のステップへ行けばよいだけのことです。
「先生なんだから、何でも解けるでしょ、私は違うけど」ではなくて、生徒さんにも、「講師も同じように勉強し続けていて、わからない問題は必死になって考えるし、一緒になって学びながらサポートしているんだ」ということを感じてもらえるように居られればいいなと思っています。